積立NISAの投資期間・投資可能枠の謎

1 謎の発端

平成29年度税制改正により積立NISA制度が創設された。当初の積立可能期間がH30からH49の20年間、年間上限額40万円であったため、投資可能枠は必然的に800万円であった。
金融庁の「つみたてNISAの概要」(創設当時のもの)でも「非課税で保有できる投資総額は最大800万円となります。」との記述がある。
その後、改正により積立可能期間が令和24年まで(2042年)まで延長された。
その結果、「積立可能な投資枠が拡大した!」「いやいや投資可能枠は800万円だから20年間に変わりはない」「ダイヤモンド社が問い合わせたところ800万円超えても大丈夫との回答だったという記事がある」「金融庁の発表を見ないとわからん」などの意見が出て、謎となった。

2 積立NISAの根拠

積立NISAは、租税特別措置法第37条の14、同施行令第25条の13、租税特別措置法施行令第二十五条の十三第十五項の規定に基づき内閣総理大臣が財務大臣と協議して定める要件等を定める件 等に根拠を有する制度である。

そして、これらを確認すると、次のことは明記されている。
・積立期間(正確には非課税累積投資契約の期間)
 平成三十年一月一日から令和二十四年十二月三十一日
・非課税期間
 積み立てた年の1月1日から20年を経過した日
・年間上限額
 40万円

他方、上記積立期間のうち最大20年間に限るとか、総投資上限800万円という記述は見当たらない(私が確認できていない可能性があるので、もし法令上の根拠をご存知の方がいたら教えてください)

3 帰結

上記からすると、積立上限期間20年間とか、投資可能枠800万円とかは、当初の積立NISAの制度を前提としたものにすぎないように思われる。
租税法律主義からすれば、法令上、非課税と解釈できる20年超、800万円超の部分も非課税の根拠がある以上は課税できないはずである。
もっとも、延長されたのが、老後に向けての個人による資産形成を促し、最初から参入した者と、事後的に参入した者との平等を図る趣旨だとすれば、上限が設定されることも合理性がある。私の見落としか、今後上限が設定される可能性があるのか、わからない部分は残る。
ただ、個人的には、政府の方針(個人の資産形成)からは、積立NISA制度は年間上限40万円は維持しつつ、期間を今後も延長し、それに伴い上限額も拡大し、政府の年金等社会福祉に頼らせない方向へ進むのではないかと考察する。

4 補足(2020/12/22追記)

誤解はないと思うが、積立期間と非課税期間は別である。非課税期間は20年間と条文に明記されており、20年満了した年の分(2020年に購入した分は2039年末で満了)については、満了時の価格を取得価格として特定口座に移管するか、満了前に売却して損益を確定させることになる。
したがって、ある一定時点において、非課税枠として保持できるのは800万円であることは事実である。
より具体的には、2020年から開始して毎年40万円を積み立てたとする。
2040年は21年目となるが、上記の積立上限期間20年という制限がなければ(条文上はないように思われる)、2040年も積み立て可能である。しかし、2020年に積み立てた分(取得価格40万円)は、2039年の満了をもって非課税枠から外れるため、2040年は2021年からの20年分800万円の非課税枠を有していることになる。

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